防音・防炎・防塵…養生シートの基本性能を整理
解体工事で使用される養生シートは、現場の安全性や近隣への配慮を目的に多様な性能を備えたものが求められます。主な機能には、防音、防塵、防炎、飛散防止、視認性確保などがあり、それぞれの目的に応じて最適な種類を選定する必要があります。以下は、代表的な養生シートの性能を用途別に整理したものです。
| シート種別 |
主な用途 |
特徴 |
| 防音シート |
騒音対策 |
厚手のゴム素材で遮音性能が高い |
| 防塵シート |
粉塵飛散防止 |
通気性を保ちつつ微細粉塵をブロック |
| 防炎シート |
火災リスク対策 |
難燃素材で火の粉の拡散を防ぐ |
| 飛散防止シート |
落下物・破片対策 |
金網入りで飛散物に耐える構造 |
| UVカットシート |
紫外線劣化防止 |
長期養生用・屋外向けで耐候性が高い |
騒音が問題となる都市部では「防音シート」が不可欠です。厚さ0.5mm以上のゴムやPVC素材を用いたタイプが多く、敷地境界に設置することで工事音を20〜30%軽減できるとされています。粉塵が懸念される木造や内装解体では「防塵シート」が重宝され、特に通気型の不織布タイプは現場作業員の快適性も損なわず施工しやすい点が魅力です。
また、老朽化が進んだ建物や電気溶断を伴う作業では「防炎性能」が重要視されます。消防法の観点からも、火元を使う解体では防炎認定品の使用が求められるケースがあります。公共施設や病院、教育機関などの近隣工事では特に配慮が必要です。
飛散防止を目的とした「金網入りの養生シート」もRC造や大規模構造物の解体で導入されており、落下物による二次被害を防ぐ安全対策として評価されています。現場の安全と近隣配慮を両立させるには、これらの性能のうちどれが最優先かを見極め、最適なシートを選定する必要があります。
木造・RCなど工事種別での使い分け
建物の構造や工事の種類によって、養生シートの選定や構成は大きく異なります。解体対象が木造か鉄筋コンクリート(RC)か、あるいは内装解体かによって、養生の目的・厚み・耐久性・費用のバランスが変動するためです。
以下に構造別・工事別のシート選定の傾向を示します。
| 建物構造・工事種別 |
推奨される養生シート構成 |
注意すべき施工要素 |
| 木造住宅(戸建て) |
防塵・防炎シートの併用 |
軽量構造ゆえ飛散リスクが高い |
| RC構造(集合住宅) |
飛散防止シート+防音シート |
落下物の重さ・騒音レベルが高い |
| 商業施設解体 |
防炎・防音・視認性シートの3点構成 |
来客者の視認性、夜間工事での反射機能 |
| 工場・倉庫 |
厚手養生+風抜き構造のあるタイプ |
粉塵の量・作業時間の長期化に対応が必要 |
木造住宅では、断熱材や石膏ボードなどの粉塵が舞いやすく、さらに火気を使う場面もあるため、防炎性と防塵性を両立させたシートが効果的です。特に住宅密集地では近隣との距離が近いため、地面からの高さや端部の固定まで徹底することが求められます。
RC造の解体では、鉄骨やコンクリートの大きな破片が落下しやすくなるため、金網入りの飛散防止シートが標準です。また、作業時の騒音が木造よりも大きくなる傾向があり、合わせて防音性を強化する必要があります。
テナントビルや商業施設などの内装解体では、屋内通路や共用部分の防塵対策が中心となるため、薄手でも高性能なフィルター付きシートや、ロールタイプで取り外しやすいものが好まれます。