JIS規格と型式の違い(飛来落下物用・墜落時保護用の比較)
ヘルメットの選定において最も重要なポイントの一つが、JIS規格に基づいた型式の違いの理解です。現場に適さない種類を着用していると、安全性を著しく損ねるだけでなく、労災事故発生時の責任問題にも発展しかねません。特に解体工事など高所作業を含む作業環境では「墜落時保護用ヘルメット」の着用が求められます。
JIS T 8131(保護帽)では、ヘルメットの型式を以下のように分類しています。
型式分類 |
主な用途 |
認証マークの記号 |
主な保護対象 |
飛来落下物用(A種) |
上から物が落ちてくる作業 |
A |
頭頂部への衝撃緩和 |
墜落時保護用(B種) |
高所作業、墜落時の衝撃対策 |
B |
頭部全体、首への衝撃緩和 |
JISマークは通常、ヘルメット内部のラベルやシールに記載されており、「A」もしくは「B」の記号と共に、型番や製造年月が印字されています。たとえば「JIS T 8131 B」の記載があれば、その製品は墜落時保護用に適合していることを意味します。
型式を選ぶ際の確認ポイントは以下のとおりです。
- ヘルメット内側にJISマークが表示されているか
- B種の場合、側頭部や後頭部までしっかりと覆う設計になっているか
- 落下衝撃だけでなく、墜落時のねじれ(トルク)にも対応する構造か
- 使用期限(製造日よりおおむね3~5年)を過ぎていないか
作業責任者は、これらの点を踏まえて現場での選定チェックリストを作成し、定期的に更新する体制づくりが求められます。なお、メーカーによっては独自に「墜落時対応」のアイコンや識別ラベルを設けている場合もあるため、仕様書や製品説明書の確認も欠かせません。
用途別ヘルメットの構造と素材の特徴(ABS・FRP・PC樹脂など)
ヘルメットには、用途に応じた多様な素材と構造が存在します。とくに「墜落時保護」を前提とした場合、素材ごとの特徴を理解し、作業環境に適したものを選ぶことが事故防止の鍵となります。
以下の表に、代表的な素材とその特徴、適した作業環境を整理しました。
素材名 |
耐衝撃性 |
耐熱性 |
重量感 |
主な用途例 |
ABS樹脂 |
高い |
中程度 |
軽い |
一般建設・屋内解体作業 |
FRP(ガラス繊維強化プラスチック) |
非常に高い |
非常に高い |
やや重い |
高温環境・火花飛散がある現場 |
PC(ポリカーボネート) |
極めて高い |
中程度 |
非常に軽い |
高所作業・頻繁な移動が伴う現場 |
ABS樹脂製のヘルメットは軽量で扱いやすく、多くの一般建設現場で採用されています。一方、FRP製は耐熱性と耐衝撃性に優れており、解体時の火花や粉塵の多い過酷な作業環境に向いています。また、PC樹脂は透明性と軽さを兼ね備え、長時間着用しても疲れにくいのが特長です。
選定時には、以下の点に注意しましょう。
- 作業時間が長い場合は軽量性(PC・ABS)を優先
- 熱源や火花が生じる現場ではFRP素材を推奨
- 外気温の影響が大きい現場では通気性構造の有無も重要
- 内装(ハンモックやアジャスター)の通気性・フィット性
林業・電気・解体現場での使用想定と最適モデルの選定基準
作業現場ごとに求められるヘルメットの性能は異なります。特に林業や電気工事、解体作業のように環境条件が厳しい作業では、業種に最適化されたモデルの選定が必要です。
以下に、代表的な業種別に必要とされる性能と選定のポイントをまとめました。
業種 |
主なリスク |
選定基準 |
推奨機能 |
林業 |
樹木の落下、虫害、悪天候 |
頭部全体の耐衝撃性、防水性 |
雨滴浸入防止、チンストラップ装備、遮音性 |
電気工事 |
感電、高所作業 |
絶縁性能、軽量性、通気性 |
絶縁規格対応(7000V以上)、無通電部材仕様 |
解体現場 |
飛来物、粉塵、高所墜落 |
墜落時保護性能、耐粉塵、耐久性 |
B種適合、フルシールド、FRP素材、遮音シールド付き |
たとえば、林業では気象条件の変化が激しく、雨天作業も日常的なため、防水性や頭部の密閉性が求められます。また、枝や落木の接触による衝撃もあるため、B種対応かつ耳あてやフェイスガード付きモデルが適しています。
電気工事においては、感電防止が最優先です。JIS T 8131適合に加え、JIS C 3360(電気作業用絶縁保護帽)への対応が推奨されており、外装に金属部品を使用しない設計が基本です。
解体現場では、鉄骨の切断時や壁の取り壊しにより、粉塵や破片が大量に飛散します。そのため、視界保護のためのシールドやフィルター機能付きモデル、粉塵防止のあご紐密着設計が重要視されます。ヘルメットの使用耐用年数や耐候性能も加味し、現場での管理記録と合わせた定期交換が推奨されます。