単管足場は、その名の通り鉄パイプ(単管)を使用して組み立てられる仮設足場であり、比較的安価かつ自由度の高い足場として広く解体工事の現場で用いられています。この足場の最大の特長は、現場ごとの地形や構造に合わせて柔軟なレイアウトが可能である点です。特に狭小地や複雑な形状の建物解体においては、その形状適応性が高く評価され、選ばれることが多くなっています。
一方で、単管足場の構造は熟練度に依存する部分が多く、ボルトを使って金具(クランプ)でつなぎ合わせる「組み方の基本」を理解しなければ、安全性に課題が生じる可能性もあります。適切な壁つなぎ材を使用しないまま組み上げた場合、強風や重機の振動で倒壊のリスクが高まるため、設置には高度な判断と慎重な作業が求められます。
単管足場設置時に最も重要となる「壁つなぎ」とは、足場と建物本体をつなぐ補強材のことで、足場全体の安定性を飛躍的に向上させます。特に2階建て以上の建物や、RC造・鉄骨造のような重量構造の解体時には、壁つなぎの設置数と間隔が厳密に定められており、厚生労働省の「足場基準図解」によると、水平つなぎ・垂直つなぎを含めた三次元補強が必須とされています。
また、単管足場の解体時には、以下の点に特に注意が必要です。
- 上層からの順次解体(下からの撤去は絶対NG)
- ボルトのゆるみや腐食の確認(経年による脆弱化)
- 仮設資材の飛散防止処置(ネットやシートの残留)
- 重機接触の危険回避(作業員との連携が重要)
次に、単管足場の特徴と施工条件をわかりやすく整理した表を掲載します。
| 項目
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内容
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| 主材
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鉄パイプ
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| 固定方式
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ボルト式クランプによる締結
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| 主な用途
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狭小地、複雑形状の建物解体、柔軟な設計が求められる現場
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| メリット
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自由度が高い、コストが比較的安い、資材流通が多く入手しやすい
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| デメリット
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熟練技術が必要、組立に時間がかかる、強度が施工者の質に左右されやすい
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| 法令対応
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足場の組立て等作業主任者の配置義務あり
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このように単管足場は、コストパフォーマンスと柔軟性に優れた選択肢ですが、安全確保のためには施工体制と現場管理の質が極めて重要です。経験の浅い業者が扱う場合、見た目では分からない欠陥が潜んでいることもあるため、契約前には業者の施工経験・安全講習履歴・保有資格を確認することが重要です。
枠組足場は、工場製作された鋼製の枠をモジュール式に組み上げていく仮設構造であり、高さがある建物の解体工事や、風圧・振動への耐性が求められる大規模現場で主に採用されます。組み立てが早く、作業員が使用するための作業床も広く確保できるため、効率的かつ安全性の高い施工が実現可能です。
この足場の構造は、ジャッキベース→支柱(縦枠)→布枠(横)→手摺り枠→筋交い→作業床→階段→踊場といった流れで構成され、全体が直角に接合されるため安定性が高く、法令基準に沿って一定間隔で壁つなぎ材を挿入することで風圧耐性も強化されます。
耐久性と剛性が高い分、資材が重量級であり、設置時には重機や資材運搬車両が必要となる点は考慮する必要があります。そのため、枠組足場は資材搬入スペースや周囲の道路事情にも配慮しなければならず、都市部の密集地よりも郊外の広い現場で活用される傾向があります。
以下に枠組足場の特徴と他足場との比較を示します。
| 項目
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枠組足場
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単管足場
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くさび式足場
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| 耐久性
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高い
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中程度
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高い
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| 作業性
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作業床が広く快適
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狭く、移動の自由度が低い
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そこそこ快適
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| 組立スピード
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モジュール式で比較的早い
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経験者により差が出やすい
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非常に早い
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| 主な使用現場
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大型解体、工場、商業施設など
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戸建住宅、小規模解体
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中規模建物、リフォームなど
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| 導入コスト
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高め
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安め
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中程度
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枠組足場の導入コストは、単管足場と比較して1.5倍~2倍程度になることもありますが、その分、施工効率と安全性を高めることで、トータルでの工期短縮・事故リスクの削減という大きなメリットが得られます。
また現在、公共工事を含む大型施設では、枠組足場の採用が標準化されており、各自治体の仕様書にも枠組足場の使用が指定されているケースが多く見受けられます。行政や元請けからの信用を得るためにも、実績ある業者が枠組足場を導入することが増えており、建設業界においては「信頼性の象徴」としても認識され始めています。
今後も建築物の高層化や工期短縮への要請が高まる中、枠組足場の重要性はますます増すと予想されます。